不動産売却で囲い込みを見抜く実践チェックリスト30項目【現役宅建士監修】【現役宅建士が解説】

売却の基礎知識

不動産売却の「囲い込み」とは?

囲い込みとは、不動産仲介会社が自社で売主・買主の両方を見つける「両手仲介」を狙うために、他社からの問い合わせを意図的に断る行為を指します。

不動産取引において、仲介会社は売主様から物件を預かった際、その情報を「レインズ(不動産流通標準情報システム)」に登録する義務があります。しかし、あえて他社に物件を紹介させない、あるいは紹介されても「商談中」と嘘をついて断ることで、自社で買主を探そうとするケースが後を絶ちません。私がこれまで不動産業界で20年以上にわたり現場で相談を受けてきた中で、この「囲い込み」は売主様の利益を最大化する機会を奪う、最も深刻な構造的課題の一つだと実感しています。

囲い込みが行われると、本来であればもっと高く、早く売れたはずの物件が、仲介会社の利益のために機会損失を被ることになります。本記事では、被害を未然に防ぐためのチェックリストを公開します。

【媒介契約前】囲い込みを疑うべきサインとは?

契約前の段階では、「両手仲介」を強調する仲介会社や、査定価格が根拠なく極端に高い仲介会社に注意が必要です。

  • 専任媒介契約しか認めないと言われた:「一般媒介」を拒否し、自社の利益を確保しやすい「専任」や「専属専任」を過度に押し付けてくる場合、囲い込みの意図がある可能性があります。
  • 「自社には買主候補がたくさんいる」と強調する:特定の買主を抱えていることを売りにするのは、両手仲介を狙う典型的な営業トークです。こう言われたら、「それなら媒介契約を結ぶ前に、その買主候補を一度連れてきてもらえますか」と聞いてみてください。本当に顧客がいるなら、契約前に紹介することに何の問題もないはずです。それを渋るようであれば、その「顧客」は実在しないか、契約を取るための方便である可能性が高いと考えられます。
  • 売却査定額が相場より2割以上高い:相場を無視した高額査定で媒介契約を結び、その後「売れないから値下げしましょう」と誘導して、自社で買主を見つけるための準備期間を作る手法です。
  • チラシを見て問い合わせたら、いきなり媒介契約を急かされる:「お客様がいます」というチラシを見て問い合わせた場合は、その場で契約を決めず、「その購入希望者の具体的な属性(年齢層・予算・希望エリアなど)を教えてください」「媒介契約の前に、その方を連れてきてもらえますか」と確認してください。具体的な属性を答えられない、連れてくることを渋る場合は、実際には顧客が存在しない可能性が高いです。
  • 「うちと媒介契約しないと紹介できない」と言われる:これは誤りです。媒介契約を結んでいない物件であっても、仲介会社は紹介すること自体は可能であり、売買契約を成立させることもできます。「契約しないと何もできない」という説明をする仲介会社には注意してください。

私の経験上、熱心すぎるほど「自社が一番高く売れる」と豪語する担当者ほど、契約後に動きが鈍くなる傾向があります。まずは複数の会社に査定を依頼し、査定根拠が明確な会社を選別することが、囲い込みを未然に防ぐ第一歩です。なお、まれに「サクラ」(実際には購入する意思のない、業者が用意した見込み客)を連れてくる仲介会社も存在します。少しでも不安があれば、専任媒介ではなく一般媒介契約を選ぶという選択肢も検討してください。

【媒介契約後】日々の販売活動で何を確認すべきか?

契約後の確認ポイントは、「情報の透明性」が保たれているかの一点に尽きます。

  • レインズの登録証明書が送られてこない:媒介契約締結後、専任媒介であれば7日以内(専属専任なら5日以内)に登録し、証明書を交付する義務があります。これを「今すぐ売るので少し待ってください」などと先延ばしにするのは赤信号です。
  • ポータルサイト(SUUMO等)の掲載内容とレインズに差異がある:例えば、ポータルサイトには間取り図や室内写真が掲載されているのに、レインズには間取り図や写真が一切登録されていない、というケースがあります。これは、他社からの問い合わせの「質」を意図的に下げようとしている可能性があります。室内写真やVR(バーチャル内見)が、ポータルサイトと同様にきちんと公開されているかも確認してください。
  • 販売図面の連絡先が「取扱店舗の固定電話」のみか:売主担当者としては、本来一刻も早く良い条件を見つけて売主に伝えたいはずです。それにもかかわらず固定電話のみの記載になっている場合、囲い込みの意図が高いとみなされても致し方ありません。取扱店舗の固定電話のみの場合は、問い合わせをコントロールする意図が疑われます。
  • 内見の報告が月に数回しかない:広告の反響や内見の申し込み状況が極端に少ない場合、本当に広告活動が行われているか疑うべきです。
  • 当初から「自社での買取」の話を優先的にされる:媒介契約を結んだばかりにもかかわらず、早い段階から「買取」の提案を優先的にしてくる場合は注意が必要です。これは、両手仲介や自社での再販まで見据えた営業方針であり、必ずしも売主様の利益を最優先した提案とは限りません。
  • 所有不動産にケチをつけて、売れない理由を並べる:「接道が私道だから」「マンション内で事件があったから」など、売却が進まない理由を物件のマイナス要素ばかりに帰結させる担当者には注意してください。本当に販売活動を尽くした上での説明なのか、囲い込みによって売れていないだけなのかを見極める必要があります。
  • そもそもレインズに登録されていない:専任・専属専任媒介契約では登録が法律上の義務です。一社一支店だけの営業力には限りがあるため、一般媒介であっても基本的にはレインズに登録するのが通常です。専任・専属専任媒介の場合は、登録証明書を見せてもらい、実際に登録されているか確認してください。
  • 報告義務があるにもかかわらず、報告が一切ない、または売主から連絡しないと報告がない:専属専任媒介は1週間に1回以上、専任媒介は2週間に1回以上の報告義務があります。売主から催促しないと報告が来ない場合、最低限の基本行動ができていない、つまり売主の代理人であるという意識が欠けていると考えられます。早期に依頼する仲介会社を切り替えることを強くお勧めします。
  • 自社HPの閲覧数の報告だけで、他のポータルサイトや他社の動向の説明がない:自社サイトの実績だけを強調し、市場全体での反応を説明できない担当者は、情報を選別して見せている可能性があります。
  • 自店舗の顧客だけが案内されている:仲介会社はコンビニよりも数が多く存在します。それだけ多くの会社がある中で、同一物件について自社からしか一切案内がないというのは、本来かなり不自然な状況だと考えてください。セカンドオピニオンを取るなど、依頼会社の切り替えを検討すべきサインです。

実際、私がセカンドオピニオンとして相談を受けた案件では、「ポータルサイトには物件情報が掲載されているのにレインズに登録がない」「販売図面の登録がない」「自社からしかお客様が来ない」「報告がない」といった点が相談のきっかけになっていることがほとんどです。委任している担当者の口頭での報告をうのみにせず、大変ではありますが、記録が残る形での活動報告を希望するなど、すべてお任せにするのではなく自己防衛をする必要があります。

【担当者の対応】もしや?と思った時に試すべき質問は?

担当者の態度に違和感を覚えたら、以下のチェック項目で「見分け」を試みてください。

  • 「今週、他社さんから客付けの問い合わせはありましたか?」とストレートに聞く:自信を持って「あります」と即答できない場合、隠蔽を疑う必要があります。
  • 「レインズの閲覧用パスワードを教えてほしい」と頼む:これを断られた時点で、依頼している仲介会社のリテラシーを疑うべきです。宅建仲介会社には、売り出し物件のレインズへの登録、売主への登録証明書の交付、定期的な業務状況の報告などが法律で義務付けられています。この基本的な行動すら行っていないということは、囲い込みを行っている可能性が極めて高いと考えられます。
  • 担当者が「今の市場は動かない」とネガティブな発言をする:市場環境のせいにして、販売活動を停滞させていることを正当化しようとする心理が働いています。
  • 値下げを強硬に勧めてくる:囲い込みの末に「どうしても売れない」と持ちかけ、自分たちの仲介手数料を確保するために、買主を見つけやすい低価格まで引き下げさせる手法です。
  • 連絡が電話のみで、活動履歴が書面やデジタルで残らない:「報告は口頭で済ませる」担当者は、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすく、活動の実態も検証しにくくなります。メールやポータル上のレポート機能など、記録に残る形での報告を求めてください。
  • 専門用語で説明をまくし立てる:こちらが理解できないまま話を進めようとする担当者は、透明性よりも自分の都合を優先している可能性があります。
  • 第三者(他社)から連絡した際、内覧の可否についての折り返しが遅い、または来ない:あなたの物件を他社の立場から問い合わせてもらい、対応の速さを確認するのも一つの方法です(ご家族や知人に依頼するなど、誠実な範囲で行ってください)。
  • 担当者と最低でも2週間に1回、定期的な打ち合わせの機会があるか:報告が文書やメールだけで一方通行になっていないか、実際に話し合う機会が確保されているかも重要です。
  • 不安や疑問を相談できる雰囲気があるか:些細な質問にも誠実に答えてくれるか、それとも話をそらされるかで、担当者の姿勢が分かります。
  • あなたの物件の「強み(ストロングポイント)」を具体的に説明できるか:マイナス要素ばかりを並べる担当者ではなく、物件の魅力をどう伝えていくかを考えてくれているかも確認してください。

私が現場でいつもアドバイスするのは、「担当者との距離感」です。二人三脚で売却を進めるパートナーであるはずが、情報を隠し始めた瞬間にそれは「不安」に変わります。この「不安の長期化」は、納得のできない売買につながる可能性が高く、後になって「あれでよかったのか」とご家族間でもめるケースも少なくありません。違和感がある場合は、迷わず別の仲介会社にセカンドオピニオンを求めてください。

物件種別ごとに確認しておきたいこと

囲い込みの見分け方は共通していますが、物件の種類によって、合わせて確認すべき点が異なります。

  • 土地・戸建ての場合:境界や法的な調査がきちんと行われているか、調査後の報告があるか、その内容を踏まえてどのような販売戦略を立てているかの説明があるかを確認してください。
  • マンションの場合:管理規約や重要事項調査報告書を取得し、管理費・修繕積立金の値上げや大規模修繕の予定を踏まえた上で、今後の戦略を考えてくれているかを確認してください。
  • 投資用不動産の場合:マスターリース契約やサブリース契約、賃貸借契約の内容を確認した上で、それを踏まえた販売戦略を提示してくれるかを確認してください。

なぜ囲い込みという構造的課題が消えないのか?

日本の不動産流通における最大の問題は、仲介手数料が「成功報酬型」である点と、「両手仲介」が法的に禁止されていない点にあります。

仲介会社にとって、売主様からのみ手数料をもらう「片手仲介」よりも、買主からも手数料をもらえる「両手仲介」の方が、売上は単純計算で2倍になります(ほとんどの仲介会社は、両手仲介を100%、片手仲介を50%という基準で評価することが多く、そもそも社内的な起点が違うのです)。このインセンティブ構造がある限り、企業の論理として「囲い込み」を誘発しやすい環境が残ってしまうのです。これは特定の会社が悪いというよりも、業界の商習慣が招いている構造的な社会課題です。

しかし、近年ではDX化が進み、レインズの閲覧環境が改善されるなど、状況は少しずつ透明化に向かっています。重要なのは、消費者が「売却は仲介会社の言いなりになるもの」という古い認識を捨て、「自分が築いた資産は自己防衛が必要であり、情報を監視する必要がある」という意識を持つことです。

まとめ

囲い込みは、不動産売却において売主様の利益を損なう重大なリスクです。以下のチェックポイントを常に意識し、適正な販売活動が行われているかを確認してください。

  • 媒介契約前:「自社だけの囲い込み」を推奨する仲介会社を避け、複数社への査定依頼で相場観を養う。顧客がいると言われたら契約前に連れてきてもらえるか確認する。
  • 契約後:レインズの登録証明書を確認し、ポータルサイトの情報と齟齬がないか照らし合わせる。図面・写真・VRの公開状況も確認する。
  • 担当者対応:レインズ閲覧用IDの提供を求めるなど、情報の透明性を要求する姿勢を見せる。活動履歴が記録に残る形で報告されているかを確認する。
  • 違和感の正体:販売期間が長引いている場合、値下げの前に「客付けが制限されていないか」を第三者に確認してもらう。

不動産売却は、人生で数少ない大きな取引です。担当者の言葉を鵜呑みにせず、自身の物件が正しく市場に出ているか、常にチェックする姿勢を忘れないでください。

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この記事を書いた人

不動産業界で20年以上、今も現場に立ち続けている現役宅建士。宅建士(宅地建物取引士)は国家資格であり、重要事項の説明・契約書への記名押印は宅建士にしかできません。

不動産取引では、物件の法的・心理的な問題点や契約上のリスクを正確に把握することが非常に重要です。宅建士はそのための専門知識と法的責任を持っています。一方、宅建士が関与しない、営業が説明を行い、宅建士が重要事項説明書だけを読み上げるような取引では、重要な告知漏れや契約内容の不備が生じやすく、後からトラブルになっても法的な保護を受けにくいケースがあります。

なお、資格の名称を名乗るだけで免許を持たない悪質なケースや免許貸しのような法令順守をしていない会社もあります。会社のホームページで宅建士が在籍しているか、顔写真付きで掲示されているかなどを確認することが、ご自身と家族を守るためにも必要であると考えます。

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