内覧が入らないのに「買取にしませんか」だけ来る。このまま買取にすべきか——順番に確かめる方法【現役宅建士が解説】

スマートフォンを見ながら考え込む男性。テーブルには物件の間取り図と書類 売却の基礎知識

売り出してから数週間。内覧希望の連絡がない。販売状況の報告がない、または報告は来ているが同じような連絡だけ。そんな中で、担当者からの提案だけは記憶にある——「買取という方法もありますよ」。

この状況は、不安になって当然です。家の売却は多くの人にとって人生で数回あるかどうかの経験で、「内覧が入らないのは普通なのか」「この提案に乗っていいのか」を比べる物差しを、売主は持ちようがありません。そして手元に判断材料がないとき、目の前にある唯一の提案は、実際より大きく見えます。

先に全体の形を伝えます。内覧が入らない理由は一つではなく、様々な要因があります。売り出しの条件に理由がある場合、物件そのものに理由がある場合、そして販売活動の側に理由がある場合。順番に確認していけば、自分がどれに当てはまるかは、担当者に尋ねなくても自分で確かめられます。そして買取に進むかどうかの判断は、その後で十分に間に合います。

先に確認したい、自分側の3つの条件

まず、買主側から内覧したいと考える条件がそろっていないのかもしれません。売主側の条件が原因になっていないか確認してみましょう。ここで説明がつくなら、内覧が入らないのは市場の自然な反応であって、あなたの判断ミスでも、担当者の怠慢でもありません。

確認1:引渡しは1年以上先ではないか

買い替え先の完成が来年で、引渡しもそれに合わせている——そういう売り出しは珍しくありません。ただ、買主の側から見るとこれは「1年間転居を待たされる物件」です。

買主は自分の生活の都合で動いています。子どもの入学、転勤、今の住まいの更新時期。「今すぐ、遅くとも数か月以内に住みたい」という層が実需の中心で、1年待てる買主は、その物件でなければならない理由がある場合に限られます。実務の肌感として言えば、引渡しまで1年以上ある物件に内覧が入らない、または極端に少ないのは、一般的なことです。よほど希少性のある物件でない限り、動きは鈍くなります。

この場合、検討すべきは業者の変更でも買取でもありません。じっくり待つか、それでも魅力的な価格に見直すか、売り出し時期そのものを再設計するか(売り先行・買い先行の判断)。時期の設計の話なので、慌てて結論を出す必要はありません。

確認2:値下げや条件変更の提案を、断った記憶はないか

担当者から「この価格では反応が薄いので、見直しませんか」という提案を受けて、断ったことはないでしょうか。あるいは、査定額より明らかに高い価格での売り出しを、自分から求めなかったでしょうか。

高めの価格で様子を見ること自体は、戦略として成立します。ただしその場合、内覧が入りにくいことをあらかじめ織り込んでおくだけでも、いまの状況のとらえ方が変わります。

一つ、知っておいてほしいことがあります。売り出しが長期になった物件は、買主から「何かあった物件では」と見られやすくなります。経験上、長期間の売り出しがプラスに働く物件は、まずありません。高値挑戦をするなら「あと1か月反応がなければ見直す」というように、自分の中で期限を区切っておく、または事前に担当者と調整しておくと安心です。価格見直しの提案を受けた経緯があるなら、いまがその検討の時期かもしれません。

ここで、期限の区切り方に関わる大事な話を一つ。売り出しは、開始からの1か月間の初速が特に大事です。不動産会社も買主も、新しく出た物件は「新規」として認識します。新鮮な物件情報は目立ち、検索でも紹介でも拡散力が強い——それがこの時期です。逆に、次々と新しい売り出しが出てくる中で、初速を活かせなかった物件は「過去の物件」として押し出されていきます。高値で様子を見るという判断は、この一番拡散力のある期間を高値で消費するという判断でもあります。それを分かった上で選ぶなら戦略ですし、知らずに過ぎていたなら、いまからの見直しに意味があります。

確認3:物件の個性が、反応の速さを決めていないか

物件そのものの性質が、反応の速さを決めていることがあります。

周辺に似た中古が複数出ていて、新築も次々に供給されている地域では、買主から見れば比較対象がいくらでもあり、急ぐ理由も、その物件でなければならない確固たる理由もありません。逆に、極端に小さい子ども部屋のある家、大がかりなリフォームが前提になる家、住宅街の中の店舗兼住宅、内装の好みが分かれる家——個性の強い物件は、気に入る人がどこかにいても、現れるまでの時間が読みにくい。似すぎていても、違いすぎていても、内覧までの時間は延びるのです

どちらの場合も、時間がかかっているのは物件の性質によるもので、あなたの売り方のせいではありません。そして、買取を考える前にできることがあります。適切な価格の見直しと、物件の「磨き込み」です(それでも状況の変化が見込めない場合の道は、後半で扱います)。

磨き込みとは、この物件を選ぶ理由を、買主の目線で作り直す作業です。写真の撮り直し、図面の見やすさの改善といった見せ方の整理に加えて、大事なのは弱みの翻訳です。弱みに見える点は、裏返せばその物件にしかない個性であり、差別化の材料になります。

例えば「部屋が狭い」なら、部屋数が多いということでもあります。他の部屋を広く使える。リモートワーク用の個室にできる。少しのリフォームでウォークインクローゼットにもなる。前の持ち主がなぜその造りにしたのか——そこには暮らしの中の理由があったはずで、その理由ごと伝えれば、同じ暮らし方をしたい買主には強みとして届きます。

デメリットと言われても、そこであきらめる必要はありません。なぜこの造りなのかという経緯と、買主にとってどんなメリットに転換できるかを、担当者と一緒に言葉にして、掲載や案内に反映する。似た物件が多いなら「違い」を、個性が強いなら「活かし方」を——どちらも、選ばれる理由を作るという同じ作業です。

3つに該当しないなら、販売活動を確かめる

引渡し時期に問題がない。価格の提案を断った記憶もない。物件の個性でも説明がつかない。それでも内覧がゼロで、報告も乏しく、買取の話だけが繰り返される——ここまで来て初めて、販売活動そのものを確かめる段階になります。

なお、ここからの確認は専属専任媒介・専任媒介で契約している場合の手順です。一般媒介の場合、レインズへの登録はそもそも義務ではありません。そして実務の実情を言えば、一般媒介は「他社で決まれば自社の手数料はゼロ」という構造のため、広告費や手間を積極的に投じない会社が少なくありません。複数社に頼んでいるのに、どの会社も本気で動いていない——という状態が起こり得ます。もし今の会社に信頼できる担当者がいるなら、その担当者に専任媒介へ切り替えることで、責任の所在がはっきりし、販売活動が本格化するケースもあります。

身構える必要はありません。確かめる対象は担当者の言葉ではなく、記録です。順番に3つ。

①レインズ登録証明書。専属専任媒介・専任媒介では、不動産会社に物件をレインズへ登録する義務があり、登録すると証明書が発行されます。受け取っていないなら、「証明書をいただけますか」と伝えて請求してください。請求の仕方と期限はレインズ登録証明書の確認方法にまとめています。

②図面と写真、掲載の中身。証明書があっても、それは「登録した」ことの証明でしかありません。販売図面が載っていない、間取りがない、写真が乏しい、情報が最小限——その状態では、買主側の不動産会社は物件を紹介しようがありません(レインズに図面が登録されていない物件)。

例えるなら、レインズへの掲載は広告です。車の広告を、写真もスペックも載せずに出すことは、戦略としてあり得ませんよね。物件も同じで、図面と写真のない掲載は、広告の形をした空白です。

そして先ほどの初速の話がここにつながります。一番拡散力のある最初の1か月に、「図面は後で」「写真は後で」「間取りは後で」となっていたら、その物件は一番目立てる時期を空白の広告で過ごしたことになります。売り出し直後にこう言われた記憶がある方は、掲載が現在どうなっているかを、この機会に確かめてみてください。

③取引状況のステータス。レインズには「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」という取引状況の区分があります。売主が何も申し出ていないのに「公開中」以外になっていないか。証明書に記載されたIDで、売主自身がレインズの売却物件確認機能から確認できます。

この3つがすべて整っていたなら、販売活動は形の上では動いています。その場合は、時期・価格・物件の性質にもう一度戻って考えるのが筋道です。

一方、確かめて販売活動の実体がなかったなら——つまり、市場に出ていなかったのなら——内覧が入らないのは「売れない」のではなく、売られていなかったということです。その状態で示される「反応がないので買取を」という提案は、根拠の部分が成立していません。実務の感覚で言えば、この組み合わせが偶然そろうことは、ほとんどありません。

もしいま、この段落で心当たりに行き着いてしまった方がいたら、一つだけ伝えさせてください。それはあなたが騙されやすかったからではありません。売主には販売活動の内側が見えない仕組みになっている以上、気づけないのが普通です。そして、ここから取れる手はまだ残っています。後半で具体的に扱います。

「買取にしませんか」が出てくる5つの理由

ここまでの確認を終えた方のために、買取の提案がなされる理由を整理します。提案そのものは、悪でも善でもありません。理由によって意味が変わります。

①仲介では売りにくい事情が物件にある——再建築不可、告知すべき事項、大規模な修繕の必要。担当者がその事情を具体的に説明でき、内覧が入らない理由と一致しているなら、提案は市場の実態を映しています。先ほどの、個性の強い物件への提案も、ここに入ることがあります。

②売主の期限が迫っている——決済期日、住み替えの日程、資金の必要。時間を優先する判断として、買取は正当な選択肢です。

③売主に買取でよい理由がある——内覧の負担を避けたい、近所に知られず売りたい、現況のまま手放したい。

④両手にしたい——自社(または関連会社)で買い取れば、取引の両側に関与できます。他社が連れてくる買主で成約するより、会社の取り分は大きくなります。

⑤再販の利益と権利を得たい——買い取った物件を改装して再び売る。仲介手数料が売買価格の3%+6万円(税別)を上限とするのに対し、買取再販の利幅は物件によってその数倍になり得ます。自社で買い取らない場合でも、提携する買取業者へつなぎ、再販売時の媒介を得るという形もあります。

①〜③は、売主の状況か物件の実態から出てくる提案です。④⑤は、会社の利益構造から出てくる提案です。そしてこれは担当者の人柄の問題ではなく、両手や再販の利幅が仲介手数料を上回るという構造の問題です。構造がそうなっている以上、提案の言葉だけを聞いて区別することはできません。

見分ける軸は——提案の前に、売る努力の証拠があるか

5つの理由を売主の側から見分ける軸は、突き詰めると一つです。買取の提案より前に、売るための活動と、その報告が実在したか

レインズに完全な形で掲載され、問い合わせや反応が報告され、価格や条件の見直し提案があり、それでも動かなかった——その経過の先にある買取提案は、努力の結果としての選択肢です。一方、掲載が不完全なまま、報告も乏しいまま、最初の目立った提案が買取だったなら、それは努力を省略した提案です。順番が逆なのです。

あわせて、連絡の頻度が自分の事情と噛み合っているかも見てください。売却には必ず動機があります。期限のある住み替えなのか、急がない住み替えなのか。動機が急いでいるのに報告が法定の最低限だけなら、その契約は形式的には守られていても、あなたの事情には寄り添っていません。これは責めるための観点ではなく、次の契約や更新のときに「どのくらいの頻度で、何を報告してほしいか」を先に伝えておく、という改善につながる観点です。

あきらめなくて大丈夫です——選択肢はまだあります

記録を確かめて、納得のいく説明が得られなかったとしても、ここで手詰まりではありません。むしろ、状況がはっきりした分だけ、打てる手も明確になっています。選択肢は一つではなく、大きく3つ。どれが正解ということはなく、あなたの状況と気持ちで選んでいい選択肢です。

選択肢1:今の会社のまま、満期を区切りにする。媒介契約の期間は、専属専任媒介・専任媒介で最長3か月です。満了すれば、更新しないという選択ができます。自動更新の特約は法律上無効なので、「更新の約束をしてしまった」と感じている方も、縛られてはいません。なお、満了を待たない期間内の解除を考える場合は、義務違反の記録——証明書の不交付、報告の欠如——が根拠になります。ここまでの確認で集めた記録が、そのまま使えます。

そして実務の感覚で一つ付け加えると、「満期をもって更新しない予定です」と早めに伝えること自体が、状況を動かすことがあります。残り期間で成約しなければ手数料がゼロになると分かった会社が、そこから本気で動き始める——そういう場面は実際にあります。解約の予告が、結果として最後の販売促進になるのです。

選択肢2:会社を切り替える。その会社と続けたくない気持ちがはっきりしている場合。もっと良い条件を引き出せる可能性を感じる場合。同じマンションの他の部屋が自分より高く売れていた場合。当初の説明と実際の活動が違っていた場合。こうしたときは、満期を待って切り替えたほうが、金額の面だけでなく、精神的な負担が軽くなります。信頼できない相手と組み続けるストレスは、売却活動の質にも判断力にも影響します。

実際の場面では、こんなことが起きます。切り替えた先の会社で、1年前の売り出し価格より高く売れた——時間が経てば安くなる一方とは限らない、という例です。逆に、今の会社に解約の意向を伝え、次の会社の話を聞いている間に、急に買主が現れて切り替え自体が不要になった——という例もあります。数か月現れなかった買主が、解約の話が出た途端に現れる。その意味は、ここまで読んだ方なら分かると思います。ただ、この売主は希望の条件で売れたことを喜んでいました。それでいいのだと思います。売主のゴールは、会社の姿勢を暴くことではなく、納得して売ることだからです。

選択肢3:割り切って、今の会社で売り切る。ここまでの確認を通じて、不動産会社の方針や事情が理解できた、掲載も改善された、という場合は、この期間は必要な確認の時間だったと割り切って、今の会社での成約を目指す道もあります。切り替えには新しい会社を探す手間と、販売活動の仕切り直しが伴います。それを引き受けてでも変えたいのか、改善が見えたなら続けるのか——比べて決めていい話です。

なお、専任媒介であれば、どの道を選んだ場合でも、親族や知人など自分で見つけた買主と直接契約する道は残されています(自己発見取引)。

いま動きがない状態は、ずっと続くわけではありません。契約には期限があり、選び直す機会は必ず巡ってきます。

コントロールできることを、実行する

最後に、誤解のないように書いておきます。買取という仕組み自体は、時間や手間や確実性を優先する売主にとって、正当で合理的な選択肢です。この記事は買取を勧めないための記事ではありません。

そして、ここまで書いてきた確認のすべてに共通することを一つ。担当者や会社があなたの物件をどう扱っているか、内心どう考えているか——それを外から完全に知ることも、コントロールすることもできません。できるのは、売主の側でコントロールできることを、一つずつ実行することです。証明書を請求する。掲載の中身を確かめる。期限を区切る。報告の希望を伝える。満期という区切りを使う。どれも、相手の善意に頼らずに、今日から自分でできることです。

売る努力が実在したことを確かめ、内覧が入らない理由に自分で説明を付けてから、それでも買取が合うと思えば、そのとき選べばいい。同じ「買取」でも、提案に流されて決めたのか、確かめてから選んだのかで、その後の納得はまったく違います。急がなくて大丈夫です。確かめる時間は、まだあります。

この記事を書いた人

不動産業界で20年以上、今も現場に立ち続けている現役宅建士。宅建士(宅地建物取引士)は国家資格であり、重要事項の説明・契約書への記名押印は宅建士にしかできません。

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なお、資格の名称を名乗るだけで免許を持たない悪質なケースや免許貸しのような法令順守をしていない会社もあります。会社のホームページで宅建士が在籍しているか、顔写真付きで掲示されているかなどを確認することが、ご自身と家族を守るためにも必要であると考えます。

現役宅建士
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不動産業界20年超。現役宅建士として、数百件の売買に携わってきました。

「もう少し早く知っていれば」——そんな言葉を、売主からも買主からも何度も聞いてきました。長年の経験で確信していることがあります。それは「ほんの少しの知識の差が、取引の明暗を分ける」ということ。

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