宅建業者の行政処分214件を分析。最も多い違反と、処分歴の正しい読み方【現役宅建士が解説】

行政処分のデータを集計した資料とグラフ 売却の基礎知識

不動産会社を選ぶとき、「この会社は処分を受けたことがあるか」を調べる人がいます。国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで確認できるためです(調べ方は行政処分歴の調べ方にまとめています)。

ただ、実際に検索してみると、多くの人がここで止まります。「業務停止7日間」と表示されても、それが何を意味するのか分からないからです。

そこで、公表されている処分を実際に集めて分析しました。2022年から2025年までの4年間、214件です。何が最も多い違反なのか、処分の重さは何で決まるのか、そして処分歴という情報をどう読めばいいのかを整理します。

調べ方と対象

集計の方法を先に書いておきます。

  • 出典:国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト(宅地建物取引業者)
  • 対象期間:2022年1月〜2025年12月
  • 件数:214件
  • 分類方法:各処分に記載された「違反行為の概要」から、違反した条文を抽出して類型化

なお、この集計には重要な限界があります。それは記事の後半で説明します。数字を読む前に、必ず目を通してください。

処分は、大きく2種類に分かれる

214件を分析して最初に分かったのは、処分の理由がまったく性質の異なる2つに分かれるということでした。

  • A. 取引の場面での違反:132件(61.7%)——重要事項説明をしなかった、媒介契約書を交付しなかった、報酬を取りすぎた、など
  • B. 業者の資格・体制の問題:82件(38.3%)——事務所の所在が分からなくなった、役員が欠格事由に該当した、営業保証金を納めていない、など

この区別は、処分歴を読むときに決定的な意味を持ちます。同じ「処分あり」でも、意味することがまったく違うからです。

処分の重さは、何で決まるのか

宅建業法の処分には、軽い順に指示・業務停止・免許取消の3段階があります。214件の内訳は、指示91件(42.5%)、業務停止74件(34.6%)、免許取消49件(22.9%)でした。

ここで、先ほどの2分類と重ねると、はっきりした違いが出ます。

取引の場面での違反(132件)

  • 指示:77件(58.3%)
  • 業務停止:51件(38.6%)
  • 免許取消:4件(3.0%)

業者の資格・体制の問題(82件)

  • 免許取消:45件(54.9%)
  • 業務停止:23件(28.0%)
  • 指示:14件(17.1%)

つまり、こういうことです。重要事項説明を怠っても、免許が取り消されることはほとんどありません(3%)。一方、事務所の所在が分からなくなったり、役員が欠格事由に該当すれば、半数以上が免許取消になります

この事実は、処分歴の読み方を変えます。「免許取消」という重い言葉を見たとき、多くの人は「ひどい取引をしたのだろう」と考えます。しかし実際には、取引の中身ではなく、業者として存続する要件を満たさなくなったことによる取消が大半なのです。

A. 取引の場面で、最も多い違反は何か

132件の内訳です(1件で複数の違反が問われることがあるため、合計は100%を超えます)。

違反の内容 2022 2023 2024 2025 合計
重要事項説明 13 13 8 11 45件(34.1%)
媒介契約 4 11 7 13 35件(26.5%)
専任の宅建士・体制 15 7 7 5 34件(25.8%)
取引態様の明示 3 6 7 12 28件(21.2%)
契約書面(37条書面) 8 7 5 20件(15.2%)
報酬(手数料) 1 3 3 2 9件(6.8%)
誇大広告等 2 5 1 8件(6.1%)
不当な勧誘等 2 2 4件(3.0%)
帳簿・従業者名簿 1 2 1 4件(3.0%)
名義貸し 2 1 3件(2.3%)

1位は重要事項説明(45件)

4年間を通して、最も多く問われているのが重要事項説明に関する違反です。年ごとに13・13・8・11件と、ほぼ一定の水準で発生しています。

中身は、説明そのものをしなかったケースだけではありません。記載すべき事項が抜けている、事実と違う内容を書いている、宅地建物取引士の記名がない——といった不備が含まれます。

実際の事例では、保険に加入していないのに「加入済み」と記載していた、登記の内容が実際と違っていた、といった記載が見られます。説明を受けた側は、書面を読んでも間違いに気づけません。だからこそ処分の対象になっているとも言えます。

近年増えているのは媒介契約(35件)

注目すべきなのは推移です。4件 → 11件 → 7件 → 13件と、この4年で明確に増えています。

さらに「取引態様の明示」(3→6→7→12件)も同じように増えており、この2つは28件が同時に問われています。つまり同じ場面で起きている違反です。

媒介契約に関する違反の中身は、契約書を交付していない、記載事項が足りない、標準的な約款と異なる内容にしている、指定流通機構(レインズ)に登録していない——といったものです。

これは売却を依頼する入口の場面です。媒介契約は法的な拘束力を持つ契約であり、その書面に不備があるということは、売主が何に同意したのかが曖昧なまま進んでいることを意味します(媒介契約書へのサインは「お願い」ではなく「契約」)。

専任の宅建士・体制は減少(34件)

一方で、減っている違反もあります。事務所に専任の宅地建物取引士を置いていない、という体制上の違反は15件 → 7件 → 7件 → 5件と減少傾向です。

この違反は「業務処理の原則」(法第31条)と常に同時に問われており、実質的に同じ事象を指しています。

B. 業者の資格・体制で、何が問われているか

82件の内訳です。

問題の内容 2022 2023 2024 2025 合計
役員等の欠格事由 9 9 10 3 31件(37.8%)
その他の体制上の問題 4 11 1 16件(19.5%)
営業保証金・保証協会 4 3 7 1 15件(18.3%)
立入検査・報告の拒否 3 2 2 3 10件(12.2%)
事務所の所在が不明 1 2 3 2 8件(9.8%)
不正な手段による免許取得 1 1 2件(2.4%)

役員等の欠格事由(31件)

最も多いのがこれです。役員に懲役刑が確定した、といった事情により、宅建業の免許を受ける資格を失うケースです。

事務所の所在が分からない(8件)

実務的に興味深いのがこの類型です。行政庁が事務所を確認しようとしても所在が確知できず、公報で告示して30日待っても申出がないため、免許を取り消す——という手続きが取られています。

つまり業者が事実上、消えている状態です。

立入検査・報告の拒否(10件)

行政庁による事務所への立入検査や、報告の求めに正当な理由なく応じなかったケースです。

この類型は、それ自体が違反であると同時に、調べられて困る事情がある可能性を示唆します。実際の記載を見ると、複数回にわたる検査に応じなかった例や、事前連絡なく不在にしていた例が含まれています。

この数字には、大きな限界がある

ここまで数字を並べてきましたが、最も重要な注意点をお伝えします。

地域別の件数は、違反の多さを示していない

214件を、処分を行った行政庁で分けると、次のようになります。

  • 東京都:69件(32.2%)
  • 兵庫県:51件(23.8%)
  • 群馬県:22件(10.3%)
  • 沖縄県:14件、宮崎県・福岡県:各11件……

この3都県で全体の66%を占めます。一方で、大阪府・神奈川県・北海道などは0件です。

ここで「大阪には悪い業者がいない」と考えるのは誤りです。国土交通省のサイトに情報を出していない自治体があるからです。実際、このサイトには次のような案内があります。

茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県、滋賀県、京都府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、山口県、徳島県、愛媛県、高知県——これら23の府県については、各県のWEBサイトで情報を公開している、と。

つまり国土交通省のサイトだけを見ても、全国の処分を把握することはできません。この記事の数字も、その限界を抱えた上での集計です。

各県のサイトには載っているが、たどり着きにくい

試しに千葉県のサイトを確認すると、処分の情報は確かに公開されていました。しかも国土交通省のサイトより詳しく、処分理由の全文まで掲載されています。

ただし、そのページに到達するまでの階層はこうです。

ホーム → 環境・まちづくり → まちづくり → 建築・建設・不動産事業者の方へ → 不動産関係 → 宅地建物取引業 → 宅地建物取引業者監督処分のお知らせ → 年度別 → 各事案

8階層です。そして注目してほしいのは、「事業者の方へ」の下に置かれていることです。処分情報を知りたいのは消費者ですが、消費者が探す動線には存在しません。

「隠している」わけではありません。しかし実質的に、消費者には届いていないのが実情です。

処分歴を調べるとき、どう読めばいいか

ここまでの分析を、実際に使える形にまとめます。

1. 「処分なし」を「問題なし」と読まない

国土交通省のサイトで検索して何も出てこなくても、その業者に処分歴がないとは限りません。23の府県は各県サイトでの公開だからです。免許を出した行政庁がどこかを確認し、そこのサイトも見る必要があります。

2. 処分の種類ではなく、理由を見る

「免許取消」と書かれていても、取引で問題を起こしたとは限りません。逆に「指示」という軽い処分でも、重要事項説明の不備という、取引の中核に関わる違反である可能性があります。

処分の重さより、何をして処分されたのかを読んでください。

3. 5年で消えることを知っておく

国土交通省のサイトが公開しているのは最近5年分です。それ以前の処分は表示されません。「処分なし」は「過去5年に、このサイトが把握している処分がない」という意味です。

処分される前に、売主・買主ができること

最後に、この214件から読み取れる実務的な示唆をまとめます。

最も多かったのは重要事項説明と媒介契約に関する違反でした。どちらも書面の不備です。そして書面は、契約の当事者である売主・買主の手元にも渡ります。

処分事例を読んで分かるのは、問題の多くが「渡された書面を確認すれば気づけたはずのこと」だという事実です。もちろん、専門的な内容を素人が完全に検証することはできません。しかし、記載があるかないか、宅建士の記名があるかないか——このレベルの確認なら誰にでもできます。

ここに挙げた確認は、それぞれもう少し具体的に書けます。どの書面の、どこを見ればいいのか——処分事例から逆算した確認の手順は、処分された会社は、何をしていたのか。売主が自分で確認できる5つの書面にまとめました。名刺の情報を鵜呑みにせず、公的なデータベースで照合する方法もあわせて書いています。

会社を選ぶ段階での見極め方は査定は何社に頼むべきか、契約前の準備は問い合わせる前の完全準備ガイドにまとめています。

まとめ

  • 2022〜2025年の処分214件のうち、取引の場面での違反は132件、業者の資格・体制の問題が82件
  • 取引の違反で免許取消に至るのはわずか3%。一方、資格・体制の問題は55%が免許取消
  • 取引の違反で最も多いのは重要事項説明(34.1%)、次いで媒介契約(26.5%)
  • 媒介契約に関する違反は増加傾向(4→11→7→13件)
  • 地域別の件数は違反の多さではなく、公表方法の違いを反映している
  • 国土交通省のサイトだけでは全国の処分を把握できない

処分歴を調べることには意味があります。ただし、「出てこない=問題ない」ではないことと、処分の重さと取引の危険性は一致しないことを知った上で使ってください。

※ 本記事は国土交通省ネガティブ情報等検索サイトの公表情報をもとに、当サイトが独自に集計・分類したものです。分類は違反条文と記載内容に基づく当サイトの判断によるもので、公的な区分ではありません。集計時点は2026年8月です。

この記事を書いた人

不動産業界で20年以上、今も現場に立ち続けている現役宅建士。宅建士(宅地建物取引士)は国家資格であり、重要事項の説明・契約書への記名押印は宅建士にしかできません。

不動産取引では、物件の法的・心理的な問題点や契約上のリスクを正確に把握することが非常に重要です。宅建士はそのための専門知識と法的責任を持っています。一方、宅建士が関与しない、営業が説明を行い、宅建士が重要事項説明書だけを読み上げるような取引では、重要な告知漏れや契約内容の不備が生じやすく、後からトラブルになっても法的な保護を受けにくいケースがあります。

なお、資格の名称を名乗るだけで免許を持たない悪質なケースや免許貸しのような法令順守をしていない会社もあります。会社のホームページで宅建士が在籍しているか、顔写真付きで掲示されているかなどを確認することが、ご自身と家族を守るためにも必要であると考えます。

現役宅建士
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不動産業界20年超。現役宅建士として、数百件の売買に携わってきました。

「もう少し早く知っていれば」——そんな言葉を、売主からも買主からも何度も聞いてきました。長年の経験で確信していることがあります。それは「ほんの少しの知識の差が、取引の明暗を分ける」ということ。

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