セカンドオピニオンは乗り換えではない。マイソクと3つの数字で確かめる【現役宅建士が解説】

机の上に並べた2枚の販売図面。左は情報が少なく、右は写真や間取りが詰まっている 売却の基礎知識

売り出してから2か月が過ぎた。内覧は数えるほどで、報告書には「活動中」と書かれている。担当者の対応が悪いわけでもない。それでも、何かが引っかかったまま消えない——そういう状態の方に向けて書いています。

先に結論を書きます。他社に意見を聞くことは、いまの会社をやめることではありません。聞いた結果「このまま続けたほうがいい」と分かることも、同じくらい起こります。この記事が渡したいのは、乗り換えの手順ではなく、引っかかりを事実で確かめる方法です。

確かめかたは2つです。他社に配っている販売図面(マイソク)を見せてもらうこと。そして閲覧数・問い合わせ・内覧という3つの数字が、どこで減っているかを見ること。数字のほうは、媒介契約の見直し判定に手元の数を入れていくと、どこで止まっているのかが並びます。どちらも今日できます。細かく確かめたい方は、囲い込みを見抜く実践チェックリストを段階ごとに用意しています。

引っかかりが消えないこと自体が、確かめる理由になる

売却の相談を受けていて、いちばん多く聞くのは「気のせいかもしれないのですが」という前置きです。そして、そう言いながら話される内容は、たいてい具体的です。内覧の後に連絡が来ない。他社から問い合わせがあったという話を一度も聞かない。資料を見せてほしいと頼んだら、少し間が空いた。

実務の肌感として、引っかかりが2か月消えないときは、たいてい何かしら理由があります。ただし、その理由が「会社のやり方に問題がある」とは限りません。価格が相場より高い、その時期に買い手が動いていない、競合の物件が近くに出た——どれも会社の落ち度ではありません。

だからこそ、理由がどちらなのかを確かめる価値があります。会社に問題がないと分かれば、疑いを抱えたまま売り続ける必要がなくなります。

時間が経つほど、選べるものが減っていく

確認を先送りしても状況が同じままなら、急ぐ必要はありません。けれど実際には、時間とともに手持ちの選択肢が少しずつ減ります。

  • 媒介契約の期間——専属専任媒介・専任媒介の有効期間は3か月が上限で、更新は依頼者の申出によると宅地建物取引業法が定めています。自動では続きません(専任媒介契約の「自動更新」は無効)。逆に言えば、満了日は考え直す機会があらかじめ用意されている日です
  • 掲載が続いた期間——買主側は、売り出しからどれくらい経った物件かを見ます。長く出ているほど、価格の相談を持ちかけやすい材料になります
  • 記録——掲載ページの閲覧数や問い合わせの件数は、さかのぼって出せないことがあります。確かめたいと思った時点の数字が、いちばん手に入りやすい数字です

早く動いたほうがいいのは、不安だからではありません。選べるものが多いうちのほうが、落ち着いて決められるからです。

確かめかた(1)自分の物件のマイソクを見せてもらう

マイソクとは、不動産会社どうしがやり取りする物件資料のことです。物件の概要、間取り、写真、周辺環境、担当者の連絡先などが1枚にまとまっています。これは売主向けの資料ではなく、他社の営業担当者が買主に見せるための資料です。

ここに、会社の姿勢が出ます。

他社に売ってもらうつもりなら、作り込む理由がある

他社の営業が買主にすすめるとき、手元にある材料はマイソクだけです。写真が暗い、間取りしか載っていない、周辺の環境やこの家の良さが何も書かれていない——そういう1枚では、すすめようがありません。

裏返すと、他社に買主を連れてきてほしい会社には、マイソクを作り込む理由があります。反対に、自社で買主を見つけて取引を完結させるつもりなら、他社向けの資料に手をかける理由がありません。実務の肌感として、他社からの問い合わせを歓迎していない物件の資料は、簡素になりがちです。

これはレインズに図面が登録されていない物件と同じ構造の、もっと静かな形です。登録の義務は果たし、登録証明書も出る。けれど中身が薄ければ、他社は動けません。囲い込みが「登録しない」という形ではなく「登録はする」という形をとるとき、差が出るのは中身のほうです。

他社が動けない状態がなぜ生まれるのか。その背景にある手数料の仕組みは、「両手仲介と片手仲介の違い」で詳しく書いています。

頼み方

むずかしい言い方は要りません。

他社さんにお渡ししている資料を、一度見せてもらえますか。

売主が自分の物件の資料を見たいと言うのは、ごく自然な依頼です。見せてもらったら、自分が買主だったらこの1枚で見に行きたくなるかという目で読んでみてください。

ただし、簡素なことには別の理由もある

ここで決めつけないことが大事です。資料が簡素になる理由は、他にもあります。

  • 居住中で家財が写ってしまうため、写真を最小限にしている
  • 売主自身が「外観や部屋の写真は載せないでほしい」と伝えている
  • 売却を知られたくない事情があり、情報を絞る方針で合意している
  • 売り出したばかりで、写真の差し替えがこれからの予定になっている

どれも珍しくありません。資料が簡素だから囲い込み、とは言えません。見たうえで「なぜこの形なのか」を聞いて、説明が返ってくるかどうか。判断の材料になるのはそちらです。

確かめかた(2)3つの数字が、どこで減っているか

もう一つは数字です。見るのは3つだけで、大事なのは絶対値ではなくどこで減っているかです。

  1. 掲載ページの閲覧数——見られているか
  2. 問い合わせの件数——見た人が動いたか
  3. 内覧の件数——動いた人が家まで来たか

閲覧が少なければ、そもそも見られていません。価格か、見せ方の問題です。閲覧はあるのに問い合わせが無いなら、資料か価格で止まっています。問い合わせはあるのに内覧にならないなら、そこで何が起きているのかを聞く価値があります。

この3つと、他社が連れてきた内覧の件数をあわせて整理できるように、媒介契約の見直し判定を用意しています。いまの状況を入れると、どこで止まっているのかが並びます。

この2つで引っかかりが消えなければ、確かめられる点はもっとあります。囲い込みを見抜く実践チェックリストに、媒介契約の前・後・担当者の対応という段階ごとに並べてあります。上から順に全部やる必要はありません。いま引っかかっている場面のところだけ読めば足ります。

報告書に数字が書かれていない場合の聞き方は、報告書は届くのに「活動中」の一行だけにまとめています。報告の頻度は法律が定めていますが、中身の基準は定められていません。「特になし」でも、形のうえでは報告した扱いになります。だから、こちらから具体的に尋ねる必要があります。

他社に意見を聞くことは、いまの会社を切ることではない

ここが気になって動けない方が多いので、分かっていることと、分かっていないことを分けて書きます。

専属専任媒介契約・専任媒介契約では、約款が禁じているのは「他の不動産会社に重ねて媒介や代理を依頼すること」です。意見を聞くこと、話を聞いてもらうことについて、約款は定めていません。

ただし、ここから「査定を頼んでも問題ない」と言い切ることはできません。どこからが「依頼」にあたるかは、やり取りの中身によって判断されるものだからです。定めに書かれていないことを、書かれていないという理由で安全だと断じるのは、この記事のやり方ではありません。

そのうえで、実務としてはこうなります。

  • いま知りたいのが「この状況をどう見るか」なら、意見を求める形で聞ける——売却の依頼ではなく、状況の見立てを尋ねる相談です
  • 確実に避けたいなら、満了日を基準にする——期間は3か月が上限で、更新は申出によります。満了日の1か月前を「考える日」と決めておけば、気持ちの問題も契約の問題も同時に解けます
  • 途中でやめる場合の費用は、状況によって変わります。媒介契約を途中でやめたいにまとめています

結論が「このまま続ける」でいい

ここまで書いてきて、いちばん伝えたいのはここです。

マイソクがしっかり作られていて、3つの数字にも説明がつき、聞いたことに答えが返ってくる。そう分かったなら、そのまま任せるのがいちばんいい選択です。付き合いの長さも、物件を理解していることも、売却では実際に効きます。確かめることの目的は、変えることではありません。引っかかりを持ったまま進むのをやめることです。

反対に、資料を見せてもらえない、数字が出てこない、聞いたことに答えが返ってこない——それが続くなら、他社の見立てを聞いてみる価値があります。そのときは、一括査定に申し込むと何が起きるかを先に読んでおいてください。申し込んだ後に何が始まるかを知らないまま使うと、確かめるつもりが別の流れに乗ってしまいます。そのうえで、査定は何社に頼むべきかが具体的な進め方です。

今日できることは1つだけです。媒介契約書を出して、契約の種類と満了日を確かめてください。そこから逆算して1か月前の日付を決めておけば、それまでは落ち着いて売却に集中できます。慌てて決める日ではなく、いったん立ち止まる日をあらかじめ置いておく——それだけで、引っかかりを抱えたまま3か月をもう一度繰り返すことはなくなります。

決めるのは売主です。この記事は、決めるための材料を並べただけです。

この記事を書いた人

不動産業界で20年以上、今も現場に立ち続けている現役宅建士。宅建士(宅地建物取引士)は国家資格であり、重要事項の説明・契約書への記名押印は宅建士にしかできません。

不動産取引では、物件の法的・心理的な問題点や契約上のリスクを正確に把握することが非常に重要です。宅建士はそのための専門知識と法的責任を持っています。一方、宅建士が関与しない、営業が説明を行い、宅建士が重要事項説明書だけを読み上げるような取引では、重要な告知漏れや契約内容の不備が生じやすく、後からトラブルになっても法的な保護を受けにくいケースがあります。

なお、資格の名称を名乗るだけで免許を持たない悪質なケースや免許貸しのような法令順守をしていない会社もあります。会社のホームページで宅建士が在籍しているか、顔写真付きで掲示されているかなどを確認することが、ご自身と家族を守るためにも必要であると考えます。

現役宅建士
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不動産業界20年超。現役宅建士として、数百件の売買に携わってきました。

「もう少し早く知っていれば」——そんな言葉を、売主からも買主からも何度も聞いてきました。長年の経験で確信していることがあります。それは「ほんの少しの知識の差が、取引の明暗を分ける」ということ。

難しい専門知識は必要ありません。わずかなポイントを押さえるだけで、誰でも安心して納得のいく取引ができます。

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