担当者とのやり取り、LINEで大丈夫ですか。記録として残らない4つの理由【現役宅建士が解説】

テーブルに並べて置かれたスマートフォンとノートパソコン 売却の基礎知識

不動産の売却が始まると、担当者とのやり取りが増えます。内覧の日程、価格の相談、買主からの要望、進捗の報告。

最近は、この連絡をLINEで行う会社が増えています。すぐ届く、既読が分かる、写真も送れる。実際に便利です。

ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。LINEでのやり取りは、記録としてはあまり機能しません。

使ってはいけない、という話ではありません。何事もなく取引が終われば、LINEで十分です。ただし何かあったときに困るのは売主です。そして、そのときに切り替えても遅い。だから、性質だけは知っておいてください。

①送信した側が、いつでも消せる

最も大きいのがこれです。LINEには送信取消の機能があり、送った側の判断でメッセージを消せます。

取り消されると、受け取った側の画面からも消えます。「メッセージの送信を取り消しました」という表示は残りますが、何が書かれていたかは分かりません。

ここが決定的です。あなたの手元にあるはずのやり取りが、相手の判断で消える。受け取った側に、それを止める方法はありません。

メールにはこの機能がありません。一度届いたメールは、送った側が消すことはできません。この違いは、記録という観点では非常に大きなものです。

②画像やPDFが、期間で消える

もうひとつ、見落とされやすい問題があります。LINEで送られた画像やファイルには保存期間があり、期間を過ぎると開けなくなります。

不動産の取引では、こういうものがLINEで送られてきます。

  • 物件の写真
  • 間取り図
  • 重要事項説明書や契約書のPDF
  • レインズの登録証明書(登録証明書とは)
  • 買主からの要望をまとめた資料

送られてきた時点では見られるので、安心してしまいます。しかし数か月後に見返そうとすると、開けなくなっていることがあります。誰かが消したわけではなく、仕組みとしてそうなっているのです。

そして必要になるのは、たいてい数か月後です。

③手元からも消える

機種変更、アプリの再インストール、端末の故障。トーク履歴は、思っているより簡単に失われます。

バックアップを取っていれば復元できますが、実際に設定している人は多くありません。そして失ったことに気づくのは、必要になったときです。

メールであれば、サーバーに残ります。機種を変えても、同じアカウントで開けば過去のやり取りが見られます。

④やり取りの中身が、ラフになる

これは仕組みの話ではなく、使う場が言葉を変えるという話です。

LINEでは、こういうやり取りになりがちです。

  • 「了解です!」
  • 「確認しときますね」
  • 「たぶん大丈夫かと思います」
  • スタンプだけの返信

悪いことではありません。会話としては自然ですし、そのほうが気楽です。

ただ、後から読み返したときに、何が合意されたのかが分からないのです。「確認しときますね」は、何を、いつまでに、どう確認するという意味だったのか。「たぶん大丈夫」は、何が大丈夫だったのか。

メールだと、同じ内容でも書き方が変わります。「◯月◯日までに、△△について先方へ確認し、ご連絡いたします」——形式が、内容の精度を引き上げます。

数千万円が動く取引の合意が、スタンプひとつで進んでいく。その違和感は、感覚の問題ではなく記録の質の問題です。

会社の側にも、記録が残らないことがある

もうひとつ、実務的な問題を挙げておきます。

担当者が個人のLINEアカウントでやり取りしている場合、そのやり取りは会社の記録には存在しません。

後日、会社に問い合わせたときに「そのような報告は受けておりません」と言われることがあります。担当者が異動したり、退職していれば、なおさら辿れません。

担当者に悪意があるという話ではなく、個人の端末の中にしかない情報は、組織の記録にはならないという構造の話です。

何かあってから切り替えても、遅い

ここが、この記事で最も伝えたいことです。

記録が必要になるのは、問題が起きた後です。「そんな説明は受けていない」「言った」「言っていない」——そうなって初めて、過去のやり取りを確認したくなります。

しかし記録を作れるのは、問題が起きる前だけです。

トラブルになってから「これからはメールでお願いします」と切り替えても、それまでのやり取りは戻ってきません。消されているかもしれない。画像は開けなくなっているかもしれない。その時点で、もう手の打ちようがないのです。

この構造は、媒介契約の解除を考えるときにも同じ形で現れます。会社の義務違反を主張するには、それを示す材料が必要ですが、材料を作れるのは契約中だけです(媒介契約書へのサインは「お願い」ではなく「契約」)。

では、どうするか

全部をメールに切り替える必要はありません。相手にも負担ですし、日程の調整など、すぐ返事がほしい連絡はLINEのほうが便利です。

使い分けをお勧めします。

LINEでよいもの

  • 内覧の日程調整(ただし決まった日時は、あとでメールにも残す)
  • 「いま向かっています」といった当日の連絡
  • ちょっとした質問

メールにしたいもの

  • 業務処理状況の報告——問い合わせ件数、内覧の実績、広告の状況
  • 価格に関する話——値下げの提案、指値への対応
  • 買主からの条件や要望
  • 書類の受け渡し——重要事項説明書、契約書、登録証明書など
  • 担当者からの助言や判断——「こうしたほうがいい」と言われた内容

要するに、後から「そう言っていましたよね」と確認する可能性があるものは、メールに残すということです。

どう頼めばいいか

切り出し方に迷うかもしれません。相手を疑っているように思われたくないという気持ちは自然です。

こういう伝え方であれば、角が立ちません。

「日程の連絡はLINEで助かります。ただ、報告や条件のお話は、あとで見返せるようにメールでいただけますか。私のほうで整理しておきたいので」

「自分のために整理したい」という理由であれば、相手を疑う話にはなりません。実際そのとおりでもあります。

嫌がられることもあります

正直に書いておくと、LINEでのやり取りが業務として定着している会社では、面倒に思われる可能性があります。手間が増えるからです。

ただ、それは会社側の都合であって、売主が譲る理由にはなりません。そしてこの頼みへの反応自体が、判断材料になります。快く応じてくれる担当者と、渋る担当者では、その後の進め方も変わってくるはずです。

具体的なメールの残し方は不動産会社との「言った言わない」を防ぐメール記録術にまとめています。

電話で聞いたことも、メールにする

あわせてお伝えしておくと、電話での会話も記録には残りません。

難しいことではなく、電話のあとに一通送るだけです。

「先ほどお電話でうかがった件、◯◯という理解でよろしいでしょうか。念のため確認させてください」

これだけで、口頭の内容が記録になります。相手が「違います」と返してくれれば、それも記録になります。認識のズレをその場で潰せるという利点もあります。

記録が必要になる場面は、これだけではありません

ここまで不動産の話をしてきましたが、後から事実を確認する必要が生じる場面は、他にもあります。

家庭の事情で財産の話をするとき、相続の分け方を話し合うとき、勤務先とのやり取りで条件が問題になるとき。そういう場面でも、LINEのやり取りは同じ弱さを抱えています。

スクリーンショットを撮り続けるという方法もありますが、手間がかかりますし、加工の余地があるとみなされることもあります。最初からメールでやり取りしておくほうが、はるかに簡単で確実です。

不動産に関しては、離婚に伴う財産分与など、記録が意味を持つ場面があります(離婚時の不動産はどうなるのか)。

まとめ——便利さと、自己保全のどちらを取るか

LINEは優れた仕組みです。何事もなければ、これほど便利なものはありません。問題は、何かあったときに記録として使えないことです。

  • 送信した側が、いつでも消せる
  • 画像やPDFは、期間で消える
  • 機種変更などで、手元からも消える
  • やり取りがラフになり、何が合意されたか分からなくなる
  • 担当者の個人アカウントなら、会社の記録にも残らない

そして問題が起きてから切り替えても、それまでの記録は戻りません。

全部をメールにする必要はありません。ただ、報告・価格・条件・書類——この4つだけはメールで。それだけでも、後から確認できるものがまったく違ってきます。

便利さを取るか、自己保全を取るか。売却の結果を引き受けるのは自分だと考えるなら、選ぶべき方向ははっきりしています。

内覧の場面で見える兆候は内覧はされるのに売れない、買付が入った後の確認は買付証明書を受け取ったら、物件状況報告書の書き方はこちらにまとめています。すでに問題が起きている場合の相談先は不動産会社と揉めたら都庁へをご覧ください。

この記事を書いた人

不動産業界で20年以上、今も現場に立ち続けている現役宅建士。宅建士(宅地建物取引士)は国家資格であり、重要事項の説明・契約書への記名押印は宅建士にしかできません。

不動産取引では、物件の法的・心理的な問題点や契約上のリスクを正確に把握することが非常に重要です。宅建士はそのための専門知識と法的責任を持っています。一方、宅建士が関与しない、営業が説明を行い、宅建士が重要事項説明書だけを読み上げるような取引では、重要な告知漏れや契約内容の不備が生じやすく、後からトラブルになっても法的な保護を受けにくいケースがあります。

なお、資格の名称を名乗るだけで免許を持たない悪質なケースや免許貸しのような法令順守をしていない会社もあります。会社のホームページで宅建士が在籍しているか、顔写真付きで掲示されているかなどを確認することが、ご自身と家族を守るためにも必要であると考えます。

現役宅建士
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不動産業界20年超。現役宅建士として、数百件の売買に携わってきました。

「もう少し早く知っていれば」——そんな言葉を、売主からも買主からも何度も聞いてきました。長年の経験で確信していることがあります。それは「ほんの少しの知識の差が、取引の明暗を分ける」ということ。

難しい専門知識は必要ありません。わずかなポイントを押さえるだけで、誰でも安心して納得のいく取引ができます。

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