媒介契約を結んで、2週間が過ぎた。1か月が過ぎた。不動産会社から、何の連絡もありません。
こちらから電話すれば「反響はまだですね」と言われる。でも、こちらから聞かないかぎり何も来ない。
この状態は、法律上あってはならないことがあります。この記事では、報告の頻度が条文でどう決まっているのか、来ないときに何ができるのかを整理します。
報告の頻度は、法律で決まっています
宅地建物取引業法に、はっきり書かれています。
第三十四条の二
9 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。
整理するとこうなります。
- 専属専任媒介契約:1週間に1回以上
- 専任媒介契約:2週間に1回以上
- 一般媒介契約:法律上の頻度の定めなし
「以上」なので、これは最低ラインです。そして重要なのが、同じ条文の第10項です。
10 第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。
「報告は求められたときにします」といった取り決めをしても、無効になります。 契約書に何と書いてあっても、頻度の義務は消えません。
3種類の媒介契約で義務がどう違うかは、早見表にまとめた記事があります。
もう一つ、見落とされやすい報告義務があります
頻度の話とは別に、その直前の第8項にこう書かれています。
8 媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。
これは頻度と関係ありません。買いたいという申込みが入ったら、そのつど、遅滞なく伝えなければならないという義務です。
ここが実務では重い意味を持ちます。「まだ反応がありません」と言われ続けているあいだに、実は申込みが入っていた。その場合、報告の頻度以前の問題になります。
申込みが売主に届かない構造については、買付証明書の記事で書いています。
実際に、これで処分された会社があります
国土交通省と各都道府県が公表している行政処分の記録を、当サイトで集計しました。272件のうち、媒介契約について定めた宅地建物取引業法第34条の2の違反を理由に挙げているものが34件。全体の12.5%にあたります。
しかもそのうち13件が業務停止処分です。指示より重い処分が4割近くを占めています。
つまり、珍しい話ではありません。 残念ながら、よく起きていると言っても言い過ぎではない水準です。だからこそ、自分の取引で確認しておく価値があります。
公表された処分理由から、実際に起きていたことを挙げます(会社名は伏せます)。
- 専属専任媒介契約なのに、レインズへの登録も、1週間に1回以上の報告も行っていなかった。加えて、媒介契約が終了して取引できない状態になった後も、インターネット上に広告を掲載し続けていた
- 専属専任媒介契約を結びながら、指定流通機構(レインズ)への登録をしなかった。媒介契約書に建物状況調査のあっせんの有無も記載していなかった
- 媒介の依頼を受けて活動していたのに、媒介契約書そのものを交付していなかった
いずれも指示処分や業務停止処分を受けています。「報告が来ない」は、実際に処分の対象になっている行為です。
ただし念のため書いておくと、報告が来ないこと自体が、ただちに違反だと決まるわけではありません。 一般媒介であれば頻度の定めはありませんし、専任でも期限内であれば違反ではない。まず自分の契約がどれかを確認するところからです。
なお、ここから挙げる3点と、報告の中身が十分かどうかは、媒介契約の見直し判定でまとめて確かめられます。契約日を入れると、契約の満了日も計算されます。
報告が来ないとき、先に確認すること
会社に問い合わせる前に、手元で確認できることがあります。
①媒介契約の種類
専属専任か、専任か、一般か。これで頻度の義務が変わります。 媒介契約書の表紙か冒頭に書かれています。
②媒介契約書を受け取っているか
そもそも書面を渡されていないことがあります。条文では、媒介契約を締結したときは遅滞なく書面を作成して記名押印し、依頼者に交付しなければならないと定められています(第34条の2第1項)。
手元にないなら、まずそこからです。
③レインズの登録証明書を受け取っているか
専任系の媒介契約では、レインズへの登録義務があり(第5項)、登録したらその証明書を遅滞なく引き渡す義務があります(第6項)。
報告が来ないうえに登録証明書もない場合、確認すべきことが2つに増えます。詳しくは登録証明書の記事にまとめています。
求め方——感情ではなく、条文で
確認できたら、会社に求めます。強く出る必要はありません。事実を並べるだけで足ります。
伝えることは3つです。
- 自分の媒介契約が専属専任か専任か
- 法律上、1週間に1回以上(または2週間に1回以上)の報告義務があること
- 直近の報告がいつだったか
そして、電話ではなく、LINEやSMSでもなく、メールで求めてください。
口頭だと「報告はしていました」と食い違ったときに、確かめようがありません。LINEやSMSは、相手が消せば消えます。端末を変えれば残らないこともある。メールなら、日付とともに双方の手元に残ります。
LINEが記録として弱い理由はこちらの記事で、記録の残し方そのものは別の記事で書いています。
実務の肌感として、条文を挙げて書面で求めると、対応が変わることがほとんどです。 義務があること自体は、会社の側も分かっているからです。
それでも来ない場合
書面で求めても改善しないなら、次の段階があります。
不動産会社の免許を出しているのは、都道府県知事または国土交通大臣です。報告義務違反は、その免許権者が扱う話になります。実際に、これで指示処分を受けた会社があります。
相談先の調べ方と、実際の相談の仕方はこちらの記事にまとめています。
もう一つ、契約の期間そのものを見直す選択もあります。専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができず(第3項)、更新は依頼者の申出によるものとされています(第4項)。自動的に延長されるものではありません。自動更新の記事もあわせて確認してください。
契約を見直すときの選び方は、「媒介契約の選び方」で詳しく書いています。
まとめ
- 報告の頻度は法律で決まっている。専属専任は1週間に1回以上、専任は2週間に1回以上(第34条の2第9項)
- これに反する特約は無効(第10項)。契約書の書き方で義務は消えない
- 頻度とは別に、申込みが入ったら遅滞なく報告する義務がある(第8項)
- まず自分の媒介契約の種類と、媒介契約書・登録証明書の有無を確認する
- 求めるときは条文を挙げて、メールで
- 改善しなければ、免許権者への相談という段階がある
報告が来ないことに、こちらが遠慮する理由はありません。報告は、頼んで出してもらうものではなく、義務として定められているものです。
そのうえで、どこまで求めるか、契約を続けるかどうかは、売主が決めることです。判断の材料として、条文と自分の契約書を手元に置いておいてください。

